横河電機~実業団常勝チームの挑戦~
2年連続2回目の出場 前回2回戦敗退
今シーズンの成績:関東実業団リーグ戦優勝(6年連続6回目) 全日本実業団競技大会優勝(3年連続3回目) 全日本社会人選手権優勝(2年連続3回目) 関東実業団選手権優勝(3年連続3回目)
『一番の目標』
2年連続社会人1位としての出場となった横河電機。昨年は2回戦で学生1位の慶應義塾大に敗れており、今大会の目標は2回戦突破に置いていた。社会人、とくに実業団の世界ではここ数年ほとんど負け知らずの強さを持つこのチームにとって、今の一番の目標はオールジャパンでのJBLとの対戦だった。
1回戦の対戦相手は福岡第一高。高校生とはいえセネガル人選手を擁し、高さは社会人に勝る。昨年の大会でも社会人2位で出場したJR東日本秋田が高校選手権優勝の延岡学園高に敗れている前例もある。「高校生だからと言って甘くは見られない。外国人選手がいることで条件は全く変わってくる」と大会前のインタビューで小納真良コーチは語っていた。2回戦でもセネガル人選手のいる天理大との対戦になることもあり対セネガル人選手の対策はしっかりと練っていた。さらに昨年の慶應義塾大との対戦で学生の速さに対抗できなかったこともあり、速さへの対策もおこなってきた。※大会前ヘッドコーチとキャプテンインタビューはこちら
そんな横河電機に大会直前思わぬアクシデントがおきた。今シーズン要としてチームを作ってきたPG#19神崎が故障で試合に出られなくなったのだ。そのため今シーズンは神崎の控えとして10分程度プレータイムを持っていた小納コーチの双子の兄弟である#8小納真樹をスタートPGとして、大会までの短い時間の中で調整を行い大会に臨まなければならなかった。
『1回戦・福岡第一高戦』
横河電機 93 ( 21-8 25-12 24-11 23-12 ) 43 福岡第一高
1回戦の福岡第一高は主力のセネガル人選手が直前に行われたウィンターカップで負傷しこの試合も欠場したことや、ウィンターカップ決勝からあまり日がたっていないこともあるのか万全の状態とは言えず、横河電機は圧勝で終えた。主力のプレータイムも抑え翌日の天理大との対戦に備えることができた。
しかしその中でも課題は見えた。これまで要所で確実に3ポイントシュートを決め勝利を引き寄せていたシューター陣の不調だった。
「調子が悪かったですね。この会場の影響もないとは言えませんが、そんなことも言ってられないので。明日はなんとか決めていきたいです」(#17高木)
『2回戦・天理大戦』
横河電機 62 ( 23-18 16-12 9-28 14-10 ) 68 天理大
迎えた2回戦、学生5位の天理大との対戦。前半は経験で勝る横河電機が試合の流れをつかむ。
第1P:開始早々横河電機#20田ヶ谷がローポストから積極的に攻めファールをもらうと、フリースローをきっちりと決め先取点を取る。すかさず天理大も#5清水のミドルシュートで応酬。ここから両チームともに中外を織り交ぜての攻撃で一歩も引かない。残り6分20秒に天理大#1根来が2個目のファールでベンチに下がる。インサイドが手薄になった天理大に対し、横河電機#20田ヶ谷と#5笹が立て続けにゴール下に攻め込み連続得点で残り3分には17‐11と横河電機が6点のリードとなる。天理大も#10サンバのゴール下、#25平尾の3ポイントシュートで追い付くも、残り1分半にはパスミスが出てターンオーバーとなり、リズムに乗れない。インサイドが好調な横河電機は#20田ヶ谷、#5笹がさらに得点を加え点差を開く。天理大は#10サンバのミドルシュートがブザーと同時に決まり、第2Pにつなげる。
第2P:スタートから天理大は#2大谷、#25平尾のアウトサイド、横河電機は#5笹、#20田ヶ谷のインサイドで得点。残り8分、横河電機が得意のトランジションの速い展開で#5笹がバスケットカウントを決めると、流れは横河電機に。続けて速攻を繰り出し、残り6分を切って横河電機のリードは12点となる。粘る天理大は#5清水が果敢にドライブで横河電機のディフェンスを崩していくと、横河電機#5笹が3個目のファールでベンチに下がる。ここから流れは天理大に傾き、天理大#10サンバのゴール下などで6点差まで追い上げる。終了間際の残り10秒、横河電機#17高木が3ポイントシュートを決め、横河電機の9点リードで前半を終える。
大会前「先手を取りたい」(小納コーチ)というプラン通り前半は勢いにのったが、インサイド陣のファールトラブルとPGが#8小納以外を使うことが難しい中、後半は厳しい展開となる。
第3P:ハーフタイムを挟み、第3Pは序盤から天理大が勢いに乗る。#1根来、#25平尾、#2大谷と立て続けに得点すると、さらに残り8分あまりには天理大#10サンバのダンクシュートが決まり、開始から3分足らずで同点となる。天理大のゾーンディフェンスになかなかリズムに乗れない横河電機は前半からコートに立ち続けている#8小納をベンチに下げるが、さらに流れが悪くなる。パスミスによるターンオーバーなどでオフェンスがつながらず、残り5分にはインサイドの核である#5笹が4個目のファールでベンチに下がる。すかさず天理大#10サンバがゴール下を攻めバスケットカウントを決めると、横河電機はタイムアウトを取る。ここから横河電機は合わせのプレーで得点を重ねるが、天理大のアウトサイドを止められず、徐々に点差が開く。横河電機10点のビハインドで第4Pへ。
第4P:両チームともにディフェンスを厳しくしたことと、インサイドのファールが嵩んだことで中を攻めることができない。ともに得点が伸びない第4P中盤、追う横河電機はタイムアウトを取りオフェンスを修正。すぐにセカンドチャンスから#14梶原が3ポイントシュートを決める。そのまま厳しいディフェンスで天理大のターンオーバーを誘い、速攻に走る#14梶原がファールを受け、そのフリースローを決めると 残り5分足らずで6点差に詰める。そこからシュートがなかなか決まらない横河電機は得点が止まり、残り2分に再びタイムアウトを取る。しかしシュートチャンスは何度もあるもシュートが決まらず追い上げられない。残り5秒に#14梶原が3ポイントシュートを決め4点差に詰めるも、時間がなく、終了間際に天理大にフリースローを決められ、6点差で天理大に敗れた。
本来の得点源の一つである3ポイントシュートがわずかに4本(14.3%)しか決められず最後まで追いつくことができなかった。
「前半は考えていた通りにすすめられていたのですが、後半は相手のゾーンディフェンスを攻めあぐねたところもあって。それにシュートがあそこまで入らないと厳しいですね。ノーマークで打ってはいるのですが、それが入らない。入らないときにどういう形で決めていくのかが重要なのですが、上手く対応ができなかったです」(小納コーチ)
神崎が試合に出られないとなってからの練習期間が少なく、練習そのものも十分なものにはならなかった。
「練習不足だったことはかなりあります。年末がほとんど練習ができなくて、できても人数が集まらず4対4くらいまでしかできていませんでした。チームとしては少し時間が足りなかったなと思います」(小納コーチ)
『常勝チームに見えた課題』
「#19神崎がいれば結果は変わっていた」かもしれない。小納コーチも「今シーズンは(#19神崎)健を中心にチームをつくてきたので、健がプレーできる状態だったら勝ててた試合だったかもしれないです。(#8小納)真樹も試合には出てはいましたが、これほど長い時間出ることはなかったので」と言う。「仕方がないと言えば仕方がないことですね。まあ、負けです。完敗です」(小納コーチ)
ここ2年あまり、このチームが“体力”“高さ”“走り”“リバウンド”などで負けていた試合はほとんどない。違うカテゴリーのチームとの対戦で改めてチームの課題が具体的に見えてきた。
「どの試合でもその試合その試合で対応していかないとこれからは厳しいと思うんです。やはり学生だと体力もありますし、ましてや外国人選手とかは普段の試合でやったことがないですから。そこはどんなチームにでも対応できるチームを作らないといけないと思っています」(小納コーチ)
そんな中でも昨年に比べ伸びた部分も見られた。昨年の慶應義塾大戦(2回戦)ではほとんと太刀打ちできなかったインサイド陣だったが、この試合では前半互角以上にやれた実感はある。
「今日は前半はやれていたのですが、後半体力的に厳しくなって足が動かなくなりました。しかし去年の慶應大戦に比べると少しずつ学生ともやれるようになっている感触はあります。次は絶対勝てるように頑張ります」(#20田ヶ谷)
横河電機のバスケットはシステムが難しく、新人が能力だけでプレータイムを得られるようなものではない。試合後奥山監督は「ああいう展開ではまだ(#13・新人)梅田は怖くて使えないからね」とつぶやいた。当の梅田は誰よりもそれを分かっていたのかもしれない。
「早く自分が健さんの控えになれるように、さらには健さんを超えてやるくらいの気持ちでやっていかないといけないです」(#13梅田、1回戦終了後)
昨年の2回戦での慶應義塾大との敗戦から1年。目標としていた2回戦突破だったが、今年もまた“学生”の壁を超えることができなかった。
「同じバスケットなのですが、学生のバスケットと社会人のバスケットは全く違うものでもあります。学生はしっかりとトレーニングなどもしていますが、社会人は自分でいかにやっていくかが重要になります。今回少しチームも崩れてしまったところもあるので、また一からチームを作り直します」(小納コーチ)
取材・文・写真 渡辺美香